平和な村を突如襲った悲劇。
愛する家族、仲の良かった友人、村人たち!自分が当たり前だと思っていた現実が突然他人の手によって亡き者にされたのだ。
かろうじて命を救われた少女に
投げかけられた言葉は「戦いたいか!死にたいか!」だった。
「死にたい!」少女はそう答えた。
兵士は「戦う意思のない物に用はない」とばかりに少女の母親の遺体にガソリンをかけて燃やし始めた。
少女の中で、母親を殺したドイツ兵と母親の遺体をなんの躊躇いもなく燃やしたソ連の軍人に対して復讐心が沸き上がった。
「殺す‼」「殺してやる‼」
その復讐心が少女の原動力となるのだ。
戦うことを選択した少女は過酷な訓練の元、一流のスナイパーに育っていく。
スナイパーは敵を殺すことを目的にした人殺し集団である。
国のためという大義名分のもと、戦場に赴き、撃ち殺した敵の数を自慢し合っているのである。
少女は家族や身内を皆殺しにされたことで兵士になった。
しかし、今度は自分が殺す側になったのだ。
敵の兵士にも家族や恋人はいるはずなのに・・・
戦争とは皮肉なものである。
戦時中は狙撃の腕を認められ、もてはやされた少女だったが、戦争が終わればみじめなものだ。
母親を燃やした上官と共に「悪魔」と称され、人里離れた山の中でひっそりと暮らすことを強いられるのだった。
後に知られることだが、兵士が母親の遺体を燃やしたのは、疫病の蔓延を防ぐ目的があったのだ。
本書を読むことで、人々を戦争に駆り立てる動機が分かるだろう。
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